「白虎童子とクロネコちゃん」後半

「白虎童子とクロネコちゃん」後半をお楽しみください!!

これは、隅田川に七色の大きな夢が花開く季節の
ちょっぴり切ない、私の心の奥にそっと刻みこまれた物語です・・・

そう、この日の一年ほど前、
しっとりした雨の降る中、
その子と出会いました。

その日、仕事から帰宅した私は、
いつもの様に愛車のキントウンを駐車する為、
車から降りて、駐車場脇の小さいボックスを開けて3つある内の上のボタンを押しました。
ギシギシと鉄が軋む音をたてながら、ゆっくりシャッターを巻き取っていく様子はいつもとなんら変わらないものでした。
ですが、半分ほどシャッターが上がった頃、
ふいに違和感を感じたのです。
目の奥に映され、しばらく脳裏に残る残像に、
普段とは異なる異物を捉えたからです。

その違和感にフォーカスして集中していくと、
隅のほうに置かれた黒い固まりに目が留まったのです。

興味と戸惑いを抱きながら近づいてみると・・・

それは!

なんと!!

黒い子猫でした。

何でそこにいるのかさっぱり状況がつかめずにいる私でしたが、
直ぐにその有様を理解して、ハッとわれに返りました。

その時、瞬時に血の気が引いて、胸のあたりが締め付けられる感覚がしたことを今でも覚えています。

小さな体を丸めて、小刻みに震わせながら、
時折思い出したように息を吸い込むといった状況に、
色々な感情や思いを残しつつ、

「今、出来ることをしよう」と心でうなづくと、
半ば強引に、現実的な思考に意識を戻しました。

それから、
しばらくして現れた母は、その子猫を見つめながら
「ここが良かったのね。」
「この子は長くないわね・・・」とささやきました。

何でこの子猫はここにいるの?
どこから入って来たの?
何でこんなにぐったり横になっている・・・???

とても複雑な気持ちでした。

もしかしたら朝からここにいて、自分が家を出るときに轢いてしまったのかもしれない。
でも朝にはここに何もなかったし、実感がない・・・

もしかしたら誰かが昼間の間にここに来て、置いていったのかもしれない。

もしかしたら、自分でここまで歩いてきたのかも知れない。

もしかしたら・・・に思いを巡らせる目の前には、ぐったり横たわる小さな体が薄い息を懸命にしぼりだしていたのです。

「ここで見取るよ」と呟く私の隣で母はつぶやきました。

「大丈夫よ、もうすぐ楽になるからね」と子猫の頭を撫でながらお経を唱え始めました。

そして、私に向かって話を続けます。
「あなたは、革細工を創っているでしょ。しっかり見ておきなさい。」

其の言葉には厳しさと優しさがこもっていて、ピッと背筋を伸ばしたことを思い出します。

それと同時に、私は近くに住んでいる友人の革職人のKのことを思い出し、
電話で事情を話しますと、すぐに駆けつけてくれました。

それからの数時間、私達の間には、会話らしい会話は無く、ただただ祈り続けたのでした。

そしてその子猫は静かに元有る場所へ帰っていきました。

「ご苦労様でした」

なんとも不可思議で、せつなくて、永遠のような時間の流れの中にいるような心持ちの中、ささやかなお葬式をしたのでした。

その時は、自分の実家がお寺で、本当に良かったと心から思ったことを覚えています。

それから私達は近くの公園に向かいました。

タオルに包んで抱えていても、本当に軽くて、小さな子、
抱いていると、何だかずっと一緒に過ごして来たような気にさえなっていました。

小雨のふる小道をゆっくり歩いていましたが、
ある小学校の横を通りすぎようとしていた時に、
何気なく目の端に飛び込んできた石碑の前で足を止めました。

頭を上げてその石碑を見上げると、

そこにはこう刻まれています。

「吾輩は猫である まだ名前はない 夏目漱石」・・・と。

グッと、胸の奥から込み上げてくる来る感情をなだめてから、

今度は、顔を下げて呟きました。

「そうか、お前、まだ名前無いのか」

・・・こんな時は、いつも、ほんの刹那の閃きに従います・・・

「名前付けてあげるよ」

「白虎童子 (びゃっこどうじ)ってどうかな」

「いい名前だろ・・・」

石碑の近くに眠っている「白虎童子」は、
一日だけですが私たちの家族になったのです。

「今度生まれてくるときは大きくなれよ」

「今度生まれてくるときは沢山食べて、沢山愛されて、沢山遊んで、幸せになるんだよ」

「そして必ず、どこかでまた会おう・・・・・・」

あの日から1年ほどが過ぎていましたが、

「ちーぼー」の意識を借りて、
久しぶりに思い出した「白虎童子」との出会いと別れの記憶、
また、その一生の物語のビジョンに触れたことに、
とても意味深さを感じました。

そして、彼女(ちーぼー)の中にある、人に対する恐れや葛藤を感じた事も、
ビジョンの中に隠れた答えも、

それらの示す結びつきが、
これからの道に関わりを持っていくということを知ることになるのでした。

その両方の意識達はビジョンを超えて、
同時に時間を進め始めることになるのです。

勿論、それは、

それぞれの宿題を乗り越えるためにこそ・・・奇跡のような・・・意図(糸)によって・・・

これが、隅田川に七色の大きな夢が花開く季節の
ちょっぴり切ない、私の心の奥にそっと刻みこまれた物語です・・・

そうそう、大きな「クロネコちゃん」から、数日後にメールが届きました。

「家に新しい家族が出来ました。お母さんが貰ってきたの。
「かわいいよー。」
送られてきた画像を見ながらこう返信しました。

「その子を大切にするんだよ、頼んだよ!!」

「その子が怯えずに、幸せで暮らしていけることと、「ちーぼー」がそうなることって同じことかもしれないからね」・・・と

そこに映っていたのは、元気そうな「黒い子猫」でした。

今年もまた隅田川に七色の大きな夢が花開く季節が訪れます。

ド・・・・・・ッ・・・・・・カ・・・・・・ー・・・・・・ン

また会えたね。

幸せに、お二人とも!!

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