「白虎童子とクロネコちゃん」

「白虎童子とクロネコちゃん」

これは、隅田川に七色の大きな夢が花開く季節の
ちょっぴり切ない、私の心の奥にそっと刻みこまれた物語です・・・

其の日、浴衣姿で訪れた「ちーぼー」は、私達にとって妹の様な存在で、可愛らしくてやんちゃで危なっかしい感じの女の子です。

「おはよう。浴衣かわいいね、すっごく似合ってるよ」
元気はつらつの普段とは打って変わり、なんともおしとやかで落ち着いた感じだったことを覚えています。
話を聞くと、友人と墨田川へ行く予定がキャンセルになった為、
わざわざ私達のところまでお披露目に来てくれたとのことでした。

そう、この日は年に一度の墨田川花火大会の当日。

普段は見ることの出来ない彼女の浴衣姿に、
ついつい仕事の手を止めてしまいます。
そして愚痴やらがこぼれるままに、しゃべり続ける彼女を見ると、
ほほえましく思えて、にんまりしてしまうのですが、
当の本人はというと、なかなか興奮が収まらないようでした。

しばらくの間、4.5割ほどの意識で聞き流すようにしながら話を聞いていると、
不意に、
もう半部の私の意識に「蓮のかんざし」を付けた彼女が浮かび上がりました・・・

それはつい数日前に創った銀細工の作品で、ちょうど浴衣姿で結った髪に飾られています。
「そうだ、この子に付けてもらおう」と思いに至り
「ちょっと頭見せてもらってもいいかな?」
とかるく頭に手をかざしたのですが・・・・・・

ピーンと張りつめた空気に時が止まったかと思った次の瞬間!!
空気がピリピリと痛々しく肌に触れ、
彼女の毛が逆立ってすごい形相になったかと思うと

「触るなよ!!!」
「これ作るのに何時間かかったと思ってるんだよ!!!!!」
「マジ切れるぞ!!!」

・・・あら~~~完全に切れました・・・

「ごめんごめん、悪かった。触ってごめんよ」と返しましたが、
どうにも興奮が収まらないようなので、
私はそーっとその場を退散、
仕事に戻ることにしたのでした。・・・

彼女が座ったベンチを横目でチラッと見やりますと、
誰がどう見ても、それはもう絵に描いたようにうなだれて、
しっかり落ち込んでいる彼女が目の端に留まります。

しばらくはそのままそっとしておいたのですが、あまりに落ち込んでいる姿が可愛そうに映り、
私は目を閉じ瞑想を始めました。

「日常的にこのような場面が他にもありはしないだろうか?」
「今の彼女へどのようにして声を掛ければいいでしょうか?」
とちょっとだけ彼女の日常に思いを傾け、
心の中でお伺いをたてていきます。

・流れてくる彼女の感情
・友達との小競り合いと摩擦
・親との確執・・・など

自動的に流れてくる数々の映像をドラマのように眺めていると、
ふいにそれらの日常的なイメージが消えて、
全く別の映像に切り替わりました。

その時、どういうわけか脳裏に浮かんだのは「黒い子猫」の物語です。
そこに意識を向けて、流れ始める断片達を追いかけるように覗いて行くと・・・

その子猫はとても怯えていました。
小さいのに親とはぐれて1匹でいる様子。
目にするすべてにおびえています。
人間に怯え・食事も食べられず・ただただ怯え震えています。
そしてそのまま亡くなった・・・小さな命の物語・・・

「?この子猫って??」
「これって」
「なんで!?白虎童子(びゃっこどうじ)なの?? 」

スーーっと意識の中で私の片側の目から涙が流れました。

私は脈略もなく流れ始めたそのビジョンに驚いて、なかば強引に我に返ると、

「あれから1年かぁ」と
あの出会いから一年ほどが経ったことを思い出したのです。

「吾輩は猫である まだ名前はない・・・・・・か」

「どうしているかな・・・」
「白虎童子(びゃっこどうじ)は・・・」

心でそうつぶやいたのです。

私は魂のお師匠様に感謝して
そっと目を開け、現実に思考を戻してから立ち上がりました。

それから、
いまだ何をどうしていいのか分からないでいる、
小さく怯えた彼女の隣へ座り、肩をぽんと叩いたのです。

「はっ」と目が覚めたように、彼女の時間が動き始めます。

「大丈夫・大丈夫・怖くない・怖くない」
「びっくりさせちゃったんだね。ごめんよ」そう声をかけると、
涙ぐみながら安堵の表情を浮かべました。

「ごめんなさい。驚いちゃっただけなの」と小さく呟く彼女に

「わかるよ、でもたまにこういう事あるんじゃないの?」
「その時の相手は、怖がっちゃったり、場合によっては嫌いになったり」
「喧嘩になったりするかもしれないでしょ」と話を続けます。

「ねぇ、今いる周りをしっかり見てみよう。」

「自分が思っているほど本当はそんなに怖い人ばっかりじゃないから。」
「大丈夫・大丈夫」
そして
「これは【ちーぼー】にとっての宿題なんだろうなぁ。・・・」
と妄想交じりで声をかけながら・・・
すでに私の興味関心は別のところに移って行きます。

「ところでさぁ「黒い子猫」って何か知らない?」

「何のこと?知らないよ」と彼女は返します。

「そっかぁ、だったらいいや、気にしないでね」と答えつつ
内心では・・・
うーん気になる・・・
気になるーーー・・・
やっぱり気になるーーー
き・・に・・な・・ー・・る・・-・・ー・・ー・・!!
分からない・・・
まぁ、いっか!
今日の所は諦めよう!!
いつものようにそのうち分かるから・・・

私は考えることを止めて、はぐらかす様に話題を変えて言いました。
「今度、蓮のかんざし、あげるね」

「ありがとう。今日はくれないの?」と彼女は聞き返しましたが、

「今日はおあずけ・・・」
「絶対似合うと思うよ」少しだけ意地悪ですが、お仕置きをしました。

何はともあれ、どうにかこうにか、この大きな「クロネコちゃん」は元の笑顔に戻ったようです。

そう、
これは、隅田川に七色の大きな夢が花開く季節の
ちょっぴり切ない、私の心の奥にそっと刻みこまれた物語です・・・

長くなりましたので、続きはまた後半につづきます・・・

これからがこのお話の本番です。
出会いと別れ、そして再会、
人や動物のそれぞれに生きるテーマを感じていただける
感動の魂の物語です。

「白虎童子とクロネコちゃん」後半をお楽しみに!!

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